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和裁士の将来性

和裁士の将来性

和裁士が抱える現在の問題点をあげ、その解決策を探り、和裁士の未来を見据えてみます。

和裁士の減少

現在、和裁士の高齢化が進む一方で、和裁を職業として望む若者も減少し、その数は年々低下を辿っている。

将来に向けての対策

まず和裁という伝統技術の素晴らしさを広く報知する必要があり、それを和裁業界全体で広告活動などを行い、和裁が魅了ある職業だということを広めていくことだと思います。そして和裁を学ぶ人を受け入れる側も、若者に対して充分な受け入れ体制を整える必要があります。



仕事量と収入の低下

和裁所などによっては仕事や収入が増加しているところもあるが、和服仕立業全体としては下降をたどっている。

将来に向けての対策

景気回復に伴う和服需要の増加といった根本的な願望はありますが、まずは和裁士として自分の足元を見つめ直してください。仕事を発注する取引先に向けての仕事量や加工賃増加の交渉、顧客拡大に向けての取り組み、仕立てのスピード化など、景気回復をただ待つのではなく、自らが行動し、事業の再編を図ることが必要でしょう。



海外縫製

中国、ベトナム、タイなど、賃金が安い海外縫製の進出により、和裁の国内シェアが激減した。また、ハイテクを駆使したミシ縫製も流通し、国内でしかも手縫い縫製となるとそのシェアは2割程と言われている。

将来に向けての対策

海外縫製は平成の初頭から行われ、ピーク時には和裁縫製の主流とさえ噂されていました。当時、和裁業界内でもこの問題は賛否両論に分かれていましたが、現在では国内縫製の重要性が見直され、日本人による和裁技術の継承を望む声が広がっています。海外縫製を一概に批判するわけではありませんが、国内縫製を継承していく立場としは、その重要性をアピールし、日本人の技術向上に努めていく以外に方法はないと思います。



和裁士の地位

技術者は、熟練された技術とモノに対し気持ちを込めて1つの作品を制作し、その対価として技術に見合った金額を受け取るべきである。しかし、和裁の場合、呉服業界のコスト削減や多額な中間マージンによって和裁士の加工料が減らされる傾向がある。(全てに値するわけではないが)

将来に向けての対策

技術=対価と考えるならば、対価が少ない分、技術は低質ということになります。この問題に関しても何も行動に移さないと何の解決もしません。着物1枚縫うことは、どれ程の労力がかかり、どれ程の技術が必要なのか、ということを当事者に理解してもらえるように訴えかけ、和裁士としての地位の向上に努めることが重要です。





呉服販売業者への思い

和服仕立業は、和服が売れて始めて生業が成り立ちます。(大まかな意味では・・・)

和服がたくさん売れればその分仕事も増え、将来性も高まります。

しかし残念ながら現在の呉服市場は年々低下を辿っています。

では、着物がより売れるようになるには、どうなればいいのか。

単純に「世の中の景気が良くなれば着物の需要も増える」とは到底思えません。

世の中がどうなればいいのか、ではなく、私たち着物に関わる者たちが、どうすればいいのか、を考えなければ着物業界に明るい未来はないからです。

以前、呉服販売業者のいわゆる悪徳商法により、消費者からの信頼をなくした時代がありました。それは極端な例としても、着物を単なる販売品としか捉えず、売ることだけを使命とする呉服販売業者が数知れず存在しています。

もちろん売上げを伸ばすことは重要ですが、こと着物などの伝統工芸品を売る場合は、「売る」だけではなく、違った意味も含まれているはずです。

例えばそれは、文化の継承です。

お客様に着物を提供するということは、同時に「文化を伝承する」ことになるのではないでしょうか。

そう考えると販売業者は、着物の文化や歴史、また着物の合理性、機能性、ファッション性などを含めたトータル的な知識が必要となり、そして自らも着物を着て、肌ざわりや匂いなどの感触を肌で感じ、着物を深く理解することが不可欠になります。

売る側は単に「売る」だけではなく、着物に対してそうした知識や経験を持ち、着物の素晴らしさを買う側に伝えることができればお客様も着物の素晴らしさを理解し、さらにそれが後世に引き継がれることになります。

そうした販売意識が着物ファンをつくり、需要の増加に繋がるのではないでしょうか。

そしてもう1つ、着物という文化を提供すると同時に、着物を着て楽しんでもらうアイデアも提供すると、より一層着物を着る機会が増え、着物の普及にも繋がるでしょう。

(私たち和裁士は着物の需要によって運営が左右することから、どうしても着物販売業者に期待を掛けてしまいます。そんな気持ちから、ものを売る専門的知識がないのにも拘らず、着物販売について自分なりの意見を述べてみました。)


それでは和裁士はどうすればいいのか。

それは呉服販売業者と全く同じことが言えると思います。

和裁という伝統技術をまずは理解し、それを販売業者やお客様に提供することです。

和裁を単なるビジネスと捉え、小手先だけの経営戦略だけでは和裁士の未来はありません。

技術を磨き、着物を着る人を第1に考え、技術を伝承していくことこそが和裁業のあるべき姿です。

そうした和裁業者が必ず成功すると信じています。



着物の普及活動

何度も述べますが、基本的に和裁業は着物の需要がないと仕事になりません。

着物が売れなければ仕事にならないわけですから着物販売業者に期待を掛けるのはある意味仕方のないことです。

しかし、和裁業者が販売業者にだけ未来を委ねていても、何の解決にも至りません。

そればかりか、着物に関わる全ての業者が一致協力しあい、着物産業を喚起させる必要があります。

「着物の素晴らしさを伝え、楽しみ方を伝え、着物を着る機会を提供する。」

そのための活動を各着物業界が個々ではなく一つとなって遂行すれば、必ず着物を着て楽しむ人が増え、結果的に着物産業が繁栄します。

具体性のないことを青臭く述べましたが、根本的にはこれが確信ではないでしょうか。



和裁の未来は暗くない

本当は「和裁の未来は明るい!」と言いたいところですが、現状の事実を偽りなく伝えると、明るい、とまでは言い切れませんでした。

しかし、間違いなく和裁の未来は暗くはありません。

世の中の機械化が進む一方で、近年では「ものづくり」の重要性が見直されています。現代の若者にしても、ものづくりに対する意識が以前よりも高まりつつあります。

このような時世によって和裁人口が増えれば、和裁業界も活気づくことになります。

先に呉服販売業者の販売意識について述べましたが、ここで誤解のないように記述しておきます。

着物を商材としてではなく、着物の素晴らしさを伝えるという意識を持った呉服販売業者がないわけではありません。

様々な視点から販売業務を捉え、着物文化を重視しながら新しい試みも企画し、そして実際に売上を伸ばしている業者は増えています。

今後もこのような業者が増えていくと和裁業界にもいい影響が及びます。

着物の普及活動についても先に述べましたが、このような活動は大分以前から全国各地で行われています。

呉服販売業者による様々な普及活動や、学会組織による着物の価値・文化を伝承する取り組み、また着物を愛する人たちが集結し着物を楽しむ催しの開催など、大小さまざまな形で普及活動が行われています。

近年の中で1つ例を挙げると、NPO法人和装教育国民推進会議により、中学校の家庭科授業に和装を学ぶ項目が導入され、若い世代にも着物を知ってもらうという意味で多大な功績をあげました。

和裁業界の活動では、現在の和裁についてを語り合うため、若い世代の和裁技術者が集う会が発足されたり、技術を継承するために各地で講習会が催されたりと、和裁技術を伝承していくための活動が全国で実施されています。

こうした活動は、近い将来必ず身を結び、すばらしい結果となって現れるでしょう。



和裁は決して絶滅しない。

和裁は決して絶滅しません。

なぜか?

それは和服がこの世からなくならないからです。

あたり前ですが、和服が存在する限り、和裁は不可欠となります。

日本人は他の国と比べて、伝統や文化を重んじ、それを伝承させていくことを非常に尊重します。

和服は日本が誇る民族衣装です。

その優美は海外でも非常に高い評価を受けていて、数ある伝統衣装の中でも世界一だともいわれています。


・そんな和服がこの世から消えてなくなることを想像できますか?

・そして、和服がなくなることを望んでいる人がいると思いますか?


確かに和服が普段着であった時代は終わりました。しかし、現在の日本でも四季折々の行事や節目に着物を着る風習があります。また、日本舞踊、茶道、歌舞伎、芸妓などに関わる人たちは毎日のように着物を着用します。

このように日本から和服がなくなることは考えにくく、和裁の需要も変化はあってもなくなることは想像できません。

近年では浴衣を着る若者が増え、ちょっとした浴衣ブームです。それをきっかけに着物にも興味を持った若者もたくさんいるそうです。

着物業界に限らず、洋から和への回帰が始まり、また伝統技術が見直されている時代です。

後は、和裁業者がこれからどうしていくかによって、和裁の未来を形づくることになるでしょう。


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